第28章 温泉街での新生活:包帯からの解放
私の営んでいる業態は世の中では大変めずらしい「事業再生プロデュース」というお仕事です。その業務の一環として、長野県上高井郡高山村山田温泉にある「梅の屋リゾート松川館」という温泉旅館を事業継承することになりました。事業継承とは、土地建物を買って、営業を行なっていく事をいいます。140年続いた暖簾を引き継ぐ事はとても素晴らしいご縁だと感じ、相当な迷いや葛藤がありましたが、ご縁を大切にしようという思いから購入を決断しました。
この決断は、息子が保育園に入園するタイミングと重なり、家族の生活の方向性を大きく変えるものでした。
私たちは、生活の舞台を名古屋からこの温泉街へ移し、新たな生活をスタートさせたのです。石橋を百万回叩き、失敗する確率をとことん減らす事が私の仕事でもあるので、移住すればお世話になる小学校や保育園を何回もお伺いして面談し、決断には3カ月を要しました。もっとも心配したことは、旅館の経営よりも、子供たちがすくすくと健康に育ってくれる環境が充実していることでした。田舎の温泉街は、診療所までは車で8分、大きな医療センターまでは車で15分と名古屋で生活している時とさほど変わらない事は大きな判断材料になりました。
学校の教育も「村内には保育園1カ所、小学校1カ所、中学校1カ所しかないので、公立ですが良くも悪くも一貫教育みたいな部分に見える時もあります。1学年は70人程度で2クラスあります。学力は全国平均のちょっと下ぐらいかな〜。あっ!クマ対策はしっかりとしてますよ!」と、(えっ?クマ?!)と、いかにも田舎らしいコメントに驚きつつも、保育園からのアップデートとなると長男が馴染めるかな?と思いましたが、そこは子供。適応能力は心配に値する事はありませんでした。
名古屋在住時には、息子は頻繁にレーザー治療を受け、日常的に包帯で覆われていました。しかし、温泉街への移住は息子にとっても大きな変化をもたらしました。
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